サステナビリティ 環境に対する取り組み

「脱炭素社会」「資源循環型社会」
「人と自然の共存社会」の実現に向けて

気候変動をはじめとした環境課題への対応は、地球資源を糧とした事業を行う当社グループにとって、持続可能な成長の実現に大きく関わる重要テーマです。当社グループは、「脱炭素社会」「資源循環型社会」「人と自然の共存社会」の実現を目指す「エア・ウォーターグループ環境ビジョン2050」をベースに中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。

具体的には、2050年までの自社活動による環境負荷ゼロ実現に向け、そのマイルストーンとして2030年に達成すべき目標をKPIに設定し、脱炭素、気候変動などへの取り組みをより一層強化しています。同時に、「terrAWell30」の実現に向け、多様な事業領域の成長軸として打ち出した「地球環境」を中心に、事業活動を通じた社会への貢献に向けた取り組みも推進しています。

気候変動への対応

当社グループは、カーボンニュートラルに向けて、自社のGHG排出量を減らす「責務」と、製品・事業を通じた社会のGHG排出削減への「貢献」の両面から取り組みを推進しています。

責務

エア・ウォーターグループのGHG排出量削減
(Scope1+2)
  • 2030年度までに30%削減(2020年度比※)
  • 2050年までにカーボンニュートラルを実現
  • GHGのうち、国内連結子会社のエネルギー起源CO₂排出量(Scope1・2)を対象とする。

貢献

製品・事業を通じた
社会のGHG削減
  • カーボンニュートラルに貢献する製品やソリューションを提供すること
  • カーボンニュートラルに資する技術を開発し、早期の社会実装に向けた取り組みを牽引すること

今後、企業成長に連動し、エネルギー消費量の増加が見込まれますが、3つの施策「省エネ」「電力のグリーン化」「燃料転換」を柱に、削減目標の達成と成長の両立を目指します。

自社の生産活動に伴う直接排出(Scope1)については、省エネ設備などへの脱炭素投資を含む省エネルギー活動、燃料転換による生産工程で使用されるエネルギーの低・脱炭素化、バイオマス燃料の活用などにより排出量を削減します。

また、外部購入エネルギーによる間接排出(Scope2)については、Scope1同様に省エネ設備などへの脱炭素投資を含む省エネルギー活動や電力のグリーン化(再エネ化)の拡大による削減を目指します。そして、2050年までには、次世代エネルギー(水素、アンモニア、合成燃料など)の活用も含めてカーボンニュートラルを目指します。

今後は、これらの施策を事業ごとに具体的なロードマップで見える化し、その取り組みを加速させていきます。あわせて、その情報開示の充実化を図っていきます。

TCFDフレームワークに基づく情報開示

当社は、2021年8月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明するとともに、「TCFDコンソーシアム」に参画しました。2022年3月よりTCFD提言に沿った情報の開示(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を行い、段階的に開示情報を拡充しています。
TCFDフレームワークに基づく情報は、Webサイトにて公表しています。

ガバナンス

当社グループは気候変動への対応を重要な経営課題のひとつと認識しており、気候変動に係る基本方針や重要事項は、最高経営委員会で審議し、重要な事項は取締役会に報告されます。気候変動に関する統括部署は経営企画室に設置された「SDGs事業推進グループ」であり、同グループは、気候変動への対応に関する諸施策の立案・実施を主導しています。

リスク管理

気候変動関連リスクについては、「経営企画室SDGs事業推進グループ」がTCFDの推奨するシナリオ分析の手法に基づいて、事業グループのTCFD推進責任者とともに評価・分析します。重要リスクについて最高経営委員会および取締役会に付議・報告することで全社のリスクマネジメントプロセスに統合する体制をとっています。

指標と目標

温室効果ガス(GHG)排出量

環境ビジョン2050の制定を契機に、そのマイルストーンとなる2030年度のGHG削減目標を2020年度対比で30%削減としています。

2022年度のGHG排出量は、バウンダリの構造的変化および製造プロセスの省エネ、燃料転換、オンサイトPPA(太陽光発電電力購入契約) の導入などにより、事業成長分の増加を含めて2021年度比で266千t-CO₂e減少となりました。目標設定対象排出源である国内エネルギー起源CO₂においても、2021年度比で84千t-CO₂e減少となり、KPIの基準年度である2020年度比においては、削減率4.0%となりました。

  • 2022年度GHG排出量は日本品質保証機構の第三者検証を受けた値

社会に対するGHG削減貢献量

「terrAWell30」では、社会課題をビジネスチャンスにすることを目指し、4つの事業グループで多様な事業を融合し、シナジーを創出することを掲げています。そのなかで、低炭素・脱炭素に貢献する主な製品・サービスとして、FIT制度を活用した木質バイオマス発電事業、重油からの燃料転換によりエネルギーの低炭素化を実現する小型LNGサテライト設備「Vサテライト」、従来のガス関連機器と比較して高い製造効率と消費電力の低減を実現した産業機器などを通じて、年間約203千t-CO₂eのGHG排出量削減に貢献しています。

主な低炭素・脱炭素に貢献する製品・サービス

製品・サービス名補足削減貢献量
(t-CO₂e/年)
木質バイオマス発電FIT制度を利用した再生可能エネルギー電力の販売139,417
Vサテライト重油からLNGへの燃転54,361
水素ガス発生装置「VHR」、
素ガス発生装置「NSPPro」
低炭素を実現する産業ガス関連機器の販売8,883
合計202,661

戦略

気候変動という予測困難で不確実な事象に関するリスクと機会を特定し、それらのリスクと機会がどのように事業の戦略に影響を与えるのかを確認するためにシナリオ分析を行いました。2022年度はすべてのユニットとその他主要事業に対象を拡大し、「4℃シナリオ」と「1.5℃シナリオ」を用いて分析を行いました。その結果、リスク、機会ともに「1.5℃シナリオ」の方が影響は大きいが、「4℃シナリオ」「1.5℃シナリオ」のいずれも十分な対応策や機会獲得・拡大を見込んでおり、不確実で長期的な将来に対し、当社の基本戦略は十分なレジリエンスを有していることを確認しました。

  • Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ ハウス)、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物や家庭で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建築物

資源循環型社会

産業廃棄物

廃棄物発生をゼロ、再使用を促進、また廃棄物を再資源化することにより、資源を循環させるサプライチェーンの実現を目指しています。2021年度実績65%だった廃棄物リサイクル率を2030年度に80%、さらに2050年に100%を目指して取り組んでいます。

なお、防府バイオマス・石炭混焼発電所の事業譲渡に伴うバウンダリの構造変化、飲料工場で発生した汚泥を肥料として販売したこと(有価物への転換)、食品工場における歩留まりの改善などにより、2022年度にKPIを達成しました。今後は、①生産プロセス改革による発生量の削減、②内製化(自社処理)、③有価物への転換、④リサイクル率の向上、を基本方針に、廃棄物削減の取り組みを進めることで、さらなる削減を目指します。

産業廃棄物排出量

当社グループでは、産業廃棄物の排出量に占める種類別の割合は、バイオマス発電(日本海水、電力)によるばいじんや燃え殻、アグリ&フーズからの汚泥や動植物性残渣によるものが大きくなっています。

人と自然の共存社会

水資源

事業活動における水資源の使用削減や排水の再利用をはじめとした、水の使用管理、環境基準に準じた排水や下水処理にとどまらず、水の中の有害物質などを浄化し、きれいな水を作り出していくことを目指します。水使用量原単位※を2030年度には2021年度実績(32m3/百万円)に対して、10%削減を目指し取り組んでいます。

  • 売上収益当たりの淡水使用量

2030年度KPIの達成に向けて、①使用量削減、②再利用化、③生産プロセスの見直し、を基本方針に、水使用量の削減を進めます。

水使用量(淡水)

当社グループは、主に清涼飲料水を製造する際の原料として、また、製品の生産や発電する際の設備冷却水として、水資源(淡水)を使用しています。水資源は生産プロセスにおける循環利用などに取り組むとともに、使用後の水は分析を行い、水環境に問題がないことを確認したうえで排水しています。

環境への取り組みに関する外部からの評価
〜「気候変動」「水セキュリティ」の2テーマで「A-」を獲得〜

当社は、国際的な環境非政府組織「CDP」※によるコーポレートサステナビリティ調査に回答しています。2022年度は「気候変動」「水セキュリティ」の2テーマで先進的な活動を行っているリーダーシップレベルの「A‒(Aマイナス)」評価を受けました。

  • CDP:ロンドンに本部を置く国際的な非営利団体。企業の低炭素化への取り組みを促進することを目的として、気候変動に関する経営リスクの観点から、世界主要企業の気候変動に関する情報を収集・分析・評価した結果を機関投資家向けに開示している。