成長戦略 FOCUS 3 :
カーボンニュートラルを成長に取り込む

気候変動問題は、電力多消費型企業である当社グループにとってマテリアリティとして取り組むべき課題であると同時に、大きな事業機会でもあります。

当社は、祖業である産業ガスを基軸に長年にわたり培ってきたCO₂回収、水素製造、メタンといった低炭素・脱炭素に資する技術や事業、地域社会とのつながりや顧客基盤、物流ネットワークなどの経営資源を有しています。当社グループは、これらの資源に加え地域の特色を活かし、地域で発生した廃棄物からクリーンなエネルギーを創出する「地産地消の資源循環型エネルギー供給モデル」の構築に取り組むことで、社会課題解決に貢献していきます。

Case 1. バイオメタンの製造と活用

持続可能な地域循環型エネルギー供給モデル

当社グループは、未利用バイオマスである家畜ふん尿から発生するバイオガスを、LNG(液化天然ガス)の代替燃料となる液化バイオメタン(Liquefied Bio Methane、以下「LBM」)に加工し、域内で消費する地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んでいます。酪農が盛んな地域においては、クリーンで持続可能な国産エネルギーとなり、家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの減少にもつながる社会課題解決型の事業モデルです。

船舶燃料

㈱商船三井をはじめとする6社の協力のもと、LBMを内航船の船舶用燃料として使用する実証試験を実施。船舶運航における脱炭素化に向けた有効な手段となります。

工場電力・製品材料

パナソニック インダストリー㈱の帯広工場でLBMの利用に向けた合意書を締結。2025年度中に工場電力とEVリレー製品の材料に使用し、工場の脱炭素化に貢献します。

都市ガス
(生活用エネルギー)

帯広ガス㈱の導管供給区域内において、LBMをLNGの代替燃料として利用する実証を実施。都市ガス利用者に向け、LBMを供給することは国内初の試み。

※全量がLNGの代替として消費されるものとすると、温室効果ガス削減率は60%以上となります。

ロケット燃料

インターステラテクノロジズ㈱が、LBMを衛星打ち上げロケット「ZERO」の燃料として使用することを決定。2023年12月より、エンジン燃焼試験棟において実証実験を開始しました。

産業ガスのコア技術とエネルギー事業のノウハウ、さらに北海道の地域事業基盤と物流ネットワークが組み合わさった、当社グループならではの取り組みで、2024年度中に事業化予定です。LBMを新たなエネルギー製品として取り扱い、今後10年間で約600億円を投資することで、社会実装を加速させます。

産業ガスメーカー
ならではの発想

家畜ふん尿由来のバイオガスを活用したい酪農家と脱炭素エネルギーを導入したい事業者に着目

ガス関連技術を応用

ガスの捕集・輸送におけるノウハウや、ガスの分離精製技術、安定供給に関わる技術を活用

LNG販売基盤を活用

製造したLBMはCO₂フリー燃料として、脱炭素を推進するユーザーにLNG代替燃料として供給

Case 2. CO₂回収技術で循環型社会を創出

ボイラーや工業炉など中小規模の工場から排出される低濃度の燃焼排ガスから低コスト・低エネルギーでCO₂を分離回収する技術は世界的にも未確立です。当社は、長年培ってきたガス製造・エンジニアリング技術や炭酸ガス・ドライアイスメーカーとしての知見を活かし、独自の吸着分離技術を用いてこれを可能にし、小型CO₂回収・利活用装置「ReCO₂STATION」を開発しました。回収したCO₂をその場でドライアイスにすることも可能であり、「地産地消」型の新しい炭酸ガスサプライチェーン構築に取り組んでいます。

排出したCO₂の再資源化・利活用

「ReCO₂ STATION」は工業炉やボイラーなどから出るCO₂濃度が約10%の燃焼排ガスでの利用を想定しています。また、CO₂を圧縮して液化炭酸ガスを作り出し、それを固体化することでドライアイスまで製造できるコンテナサイズの装置です。

当社グループは、食品などの冷却保存に使われるドライアイスのトップメーカーですが、近年、国内の製油所や製鉄所の稼働停止に伴い、ドライアイスの原料となるCO₂の調達先が減少しています。こうしたなか、将来的には地域ごとにCO₂を回収してドライアイスを製造し、地産地消型のドライアイス供給ネットワークを構築します。また、回収したCO₂を「資源」として捉え、素材や燃料に再利用する「カーボンリサイクル」の取り組みも進めています。

低濃度のCO₂をより低コストで回収する技術開発も進めており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業」に採択されました。「ナトリウムフェライト(Na-Fe系酸化物)」という素材をCO₂吸着剤として使う技術で、戸田工業㈱や埼玉大学と共同研究を行っています。現状の約半分となる2,000円台/t-CO₂の回収コストを目指します。

本装置で製造したドライアイス

Case 3. 水素サプライ事業に関わる取り組み

燃焼時にCO₂を排出しない水素の利活用は、脱炭素化の鍵のひとつです。産業ガスメーカーとして培ってきた水素ガスの製造、貯蔵、運搬から使用方法に至るまでの豊富な知見と技術を活かし、脱炭素関連施策が急速に進展する米国において、水素バリューチェーンの構築を先行して手掛けています。
同時に、日本国内でも全国の拠点を活用し、自治体や産業界と連携しながら、カーボンニュートラルへの寄与を目指しています。

米国の水素ステーション開発・
運営会社に出資

当社グループは、米国カリフォルニア州で水素ステーションの開発・運営の最大手であるFirstElement Fuel, Inc.(以下、FEF社)に出資しています。2024年までに同州で80カ所の水素ステーション網構築を目指すFEF社を支援するとともに、液化水素タンク、液化水素トレーラーをはじめとする水素ステーション運営に必要なソリューションを提供し、液化水素の製造・販売・物流など、水素サプライチェーンに関わる新たな取り組みを進めていきます。

FEF社の水素ステーション

オンサイトプラントを軸とした
国内水素サプライチェーンの構築

当社グループは、国内9カ所のオンサイト水素ガス供給拠点と、11カ所の圧縮水素製造拠点を有し、水素ガスを供給している国内屈指の水素メーカーです。
天然ガス水蒸気改質によるオンサイト生産方式の水素ガス製造装置「VHR」を全国各地に配備し、既存産業用途のサプライチェーンのクリーン化や、将来の水素エネルギー社会の実現に向けて増加が見込まれる需要に対応していきます。将来的には、製造に伴うCO₂を回収し、クリーンな水素製造を計画しています。

水素ガス発生装置「VHR」

CO₂フリー水素製造の取り組み

①「牛のふん尿」からクリーンな水素エネルギーを製造

北海道鹿追町にて、国内で唯一、カーボンニュートラルな家畜ふん尿由来のバイオガスからつくられる水素の製造・供給事業を2022年4月より開始しました。水素の利活用の促進にも努めており、鹿追町や地元企業が燃料電池自動車を導入し、乳牛のふん尿から製造した水素を燃料として、町内を走行しています。

㈱しかおい水素ファーム

②未利用天然ガスを活用したDMR法によるCO₂フリー水素の製造

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択を受け、北海道豊富町にて、メタンを主成分とする温泉付随天然ガスから、メタン直接改質(DMR)法※により、CO₂を直接排出させることなく水素を製造する実証を開始しました。

豊富町の天然ガス採取プラント

※メタンを原料として鉄系触媒などの存在下で、水素とカーボンナノチューブ などの固体炭素を生成するクリーンな反応です。得られる水素はターコイズ水素と呼ばれ、新たな水素製造方法として期待されており、戸田工業㈱と開発を進めています。