サステナビリティ 人的資本経営

エア・ウォーターグループは、2030年度に目指す姿「terrAWell30」の実現に向け、『社会課題の解決を通じた新たな企業価値の創造』を目指し、事業戦略と両輪をなす人事戦略を推進します。

HR戦略室長メッセージ

井上 喜久栄

理事 HR戦略室長

当社グループは「多様な事業・人材・技術」を創造的に掛け合わせることで 生み出されるシナジーによって『社会課題の解決を通じた新たな企業価値の創造』を目指しています。そのなかでも重要となるのが「人材」です。「人を活かす経営」が当社グループの人的資本投資の基軸にあります。とりわけ「次世代経営人材の育成」「多様性の尊重(DE&I)」「リカレント教育」「健康経営の推進」の4つの取り組みを重視し、「自主自立」「個の尊重」「人が育つ風土の醸成」を人事基本方針に掲げながら、人事戦略を推進しています。

「地球環境」と「ウェルネス」の2つの事業領域での事業活動を通じて、地球規模の気候変動や少子高齢化社会など多様化する社会課題に対し取り組みを進めています。複雑化する社会課題に向き合い、答えを出していくためには、多様な人材が自らを高め、磨き続ける必要があります。従業員一人ひとりが自律的にキャリアを考え、目指すキャリアを実現するための経験を積む機会を提供していくことが求められています。

こうしたなか、2023年度より社内公募制度を導入し、組織的視点から実施される異動だけではなく、自ら手を挙げてキャリアを選択していく機会を広げています。グループ内の人材情報を横断的に把握するとともに、グループ内の人事交流を進め、人材流動性を高めていきます。また、「挑戦する従業員」がより成長し、やりがいを持って生き生きと活躍できるように人事制度も刷新するなど、グループ一体となって将来の成長を牽引する経営人材の採用・抜擢・異動・育成を進めています。同時に、育児・介護支援をはじめ福利厚生制度の充実を含めて、従業員のWell-beingの向上を目指します。

このように、さまざまな角度から人的資本投資を進めることで、グループ全体として人材の成長を促しています。年齢や性別に関わらず、どの従業員であっても、それぞれが個々人の意思で、互いの尊重に基づいた挑戦を行うことができる環境を整え、当社グループとして人材の成長をさらに加速させていきます。

HR戦略室は、人事戦略の推進を通して、事業戦略を加速させ、当社のパーパスである「地球の恵みを、社会の望みに。」を実現していきます。

自主的なキャリア選択の推進と
次世代経営人材の育成

当社グループの将来を担う経営人材の育成を目指し、業務を通じて成長を促す「経験」、人が育つ職場風土を醸成する「評価」、自ら学ぶ機会を拡大する「研修」の3つの軸を中心に取り組んでいます。多種多様な施策を用意し、従業員が自らの意思で成長のチャンスをつかむことで、経営理念に掲げる「創業者精神」を培っていきます。

施策例1: 管理職への
ミッショングレード制の導入

成長を牽引する経営人材の抜擢・育成を促す制度として、2023年6月より管理職を対象とした「ミッショングレード制」を導入。年齢や社歴に関わらず、個々人のミッションにおけるジョブサイズと重要性、影響度などにより処遇を決め、従業員の主体的なキャリア形成を後押しする。

施策例2: 組合員(一般職)への
チャレンジグレード制の導入

2024年4月より組合員の人事制度も、本人の意欲と能力に応じた自律的挑戦を後押しし、個々人のキャリア選択や成長スピードに応じて処遇する制度へ転換。従業員一人ひとりの挑戦機会を拡大し、主体的にチャレンジする人材に報い、従業員の成長を促進する。

施策例3:
社内公募制度

2023年度より、社内公募制度を本格的に導入。一定の能力や資格を持っている従業員に対して重要なポジションを明示し、挑戦の機会を提供するとともに、自ら手を挙げてチャレンジできる機会とする。2023年度の目標は50ポジションの異動。2024年度には社内公募の対象をグループ会社にも広げる予定。

施策例4: 経営人材要件の策定と
育成体系の刷新

社会課題の解決に向け当社グループが目指す経営人材像、および経営人材として求められる要件を定義。目指すビジョンを描く「構想力」、目標を確実にやり遂げる「達成力」、事業を行ううえですべての基礎となる、何事にも真摯な姿勢を示す「人間力」の3つと定めた。将来の経営人材を養成していくために、従来の定型的な教育体系について、この3つの要件を備えていくことに焦点を当てた、一貫性のある育成体系に刷新。

社内公募を実際に活用した従業員の声

自分自身が選択したキャリアで、
日々モチベーションも上がり、成長を実感しています

これまで、当社グループの重点地域である北米事業には興味がありましたが、業務を行う際には時差や言語の難しさを感じており、自ら壁を作っていました。そのなかで、先輩社員の駐在経験を伺ったことがきっかけで、ビジネスチャンスの豊富な海外市場で、実際に産業ガス事業拡大に向けた戦略実行に携わることが自らの成長につながると強く感じ、エア・ウォーター・アメリカ現地法人への駐在を希望しました。赴任後は、北米グループ会社のメンバーと直接顔を合わせて仕事をすることで、今まで自ら作っていた壁はすぐになくなっていきました。また、同社にはさまざまなバックグラウンドを持つ同僚が大勢いて、それぞれの仕事の進め方、文化の違い、人や組織との関わり方などで見習うべき点が多く、日々モチベーションも上がり、成長を実感しています。

中垣 麗子

AIR WATER AMERICA INC.
Dept. of Industrial Gas
Director, Business Development

DE&I推進の取り組み

当社グループでは、女性が生き生きと働ける職場環境づくりをD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進の第一歩と捉え、2016年にエア・ウォーターで女性活躍推進プロジェクトを開始しました。以後5年間にわたり「職場風土の改善」「継続就業支援」「キャリア支援、採用・育成の推進」など、さまざまな取り組みを実施してきた結果、KPIである女性管理職比率と係長・主任クラスの女性比率はともに上昇しました。

これらの成果を足掛かりに、2022年度からは活動の対象を地域事業会社3社にも広げ、本格的にD&Iの取り組みを開始しました。従業員へのアンケートに基づいて①女性活躍推進、②男性の育児休暇取得推進、③介護と仕事の両立支援、④主体性発揮のための意識改革と風土改革、⑤障がい者雇用の促進、を重点課題に定め、従業員一人ひとりのワークライフバランスの充実と活躍を目指しています。

なかでも男性の育児休暇については、目標である「育児休業・休暇取得率40%以上」の達成を目指し、2022年度には育休取得者と取得希望者とのコミュニケーションの場となる「男性育休座談会」「女性育休社員と復職社員の座談会」などを実施しました。また、管理職を対象とした「ダイバーシティ
セミナー」も開催しました。

2023年度からは多種多様なバックグラウンドを持つ一人ひとりに仕事に参画する機会などが公平に与えられ、そこから生まれる人材の活力を、企業として活かすことが使命とされていることから、従来の組織的に人材の多様性を尊重し実現するD&Iに「エクイティ=公平性」をプラスしたDE&I活動の推進を行っています。

DE&I推進のための専門組織の立ち上げ

2022年度までは「D&I推進プロジェクト」をエア・ウォーターと地域事業会社3社のメンバーで推進していました。当プロジェクトで一定の成果が達成されたものの、当社グループ全体での取り組みについてはまだまだ課題があります。多様性を尊重する姿勢が企業の発展には欠かせないという認識のもと、従来のプロジェクトベースの取り組みから、HR戦略室内に専門部署を設置し、DE&I活動をさらに強力に推進する体制としました。

今後はHR戦略室と各事業部門、グループ会社が連携し、多面的にDE&I活動を実施していきます。

女性が働き続けられる職場を目指して

当社グループは、女性管理職の割合を2024年度までに10%以上(2022年度5.1%)に高めることを目標に掲げ、「採用」「継続就業」「育成」「登用」「多様性の実現」の5つのステップで女性の登用を進めています。

新卒採用者数に占める女性比率を継続的に40%以上にすることを目標に掲げて採用強化を進めているほか、継続就業を支える各種制度を運用しており、現在はメンター制度によるキャリア構築支援や女性リーダー育成プログラムの強化など「育成」に力を入れています。

エンゲージメント調査

従業員一人ひとりがやりがいを持って生き生きと働き、能力を最大限発揮できる職場環境を築くため、2023年度よりエンゲージメント調査を開始しました。自身が所属する組織と自身の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする意欲を図り、今後の事業戦略や人事戦略を進めるうえでベースとなる指標としていきます。調査結果を基に、従業員のエンゲージメント向上を目指して、会社への自発的貢献意欲の向上と組織風土や職場環境を改善する施策を実施していきます。